設立趣旨書


特定非営利活動法人 Light Heart Counselling 設立趣旨書

当団体 Light Heart Counselling は、個別心理カウンセリングとグループワーク活動による精神的社会的弱者の自立サポートを目的とする団体です。私たちは長年に亘り、家庭や学校,会社などの社会が及ぼす個人の心への影響の重大性を様々な場面で痛感して来ました。多様化する現代のストレス社会では精神的問題を抱えた方々が増加し、それに伴う病気や弊害も増え続けています。自殺や鬱病,ニート,引きこもり,無差別殺人などの日本の社会問題はその反映です。厚生労働省の調査によると、認知症などを除く精神疾患患者数は平成11年は191万人ほどであったのに対し、平成23年には270万人にまで増加し、しかもこの270万人には震災の影響により宮城県の一部と福島県の統計は含まれていません。日本社会全体におけるこれらの根底にある問題への認識や理解は未だ低く、目に見えない心の病気や問題を抱えた方々が、様々な局面で精神的苦痛や孤独などを伴う苦い日々を送っている現実に、私たちは危惧の念を抱いています。そして日常生活や様々な実体験から感じ考える事は、どの様な精神的問題やそれに付随する問題にせよ、全てはこれまでの歴史等をふまえ成り立つ教育制度を受け育った私達の築く社会の問題であり、それを支える社会構造自体の問題に集約されると言えます。しかし、家庭,学校,会社などの私達を取り囲む環境に潜む社会的病理の改善を図るということは、これまでに私達に刷り込まれてきた集団意識や、現代には通用しない過去の常識などといった根深い潜在意識にまで変化を及ぼす必要があり、どの様な大きな影響力を持つ存在にですら容易ではないと考えます。また多大な労力,時間,お金などが必要となるのも当然です。上記の様な実状から私たちは、個人や企業など一般市民による自発的活動の活性化こそが、多くの異なる物事に対する市民の理解力や意識の向上、如いては健全な日本社会へ進化するために残された手段ではないかと考えます。勿論、一般市民による小規模な活動など、社会全体に対して与える影響力としては余りに微力かもしれません。しかし、それを理由に行動を起こさない事は、この分野に長年関わり続け問題意識を持って来た者としては、全てから目を背けた無責任な行為と思えてなりません。個々の人間がこの社会の構成員であるとの自覚をしっかりと持ち、主体性と協調性をもって自分を活かす形で社会に参加していくこと。そこで初めて、全ての人が安心して幸せに暮らせる、多様性に対応出来る健全な日本社会の実現が可能になると考えます。
その様な想いから私たちは、一般社会で認識されている病気などと同等の対応やサポートを、精神的問題を持つ方々も当然のものとして受けられる社会の実現を目的とし、NPO法人設立を決意しました。心理関連の世界ではサポートを求める方々が不安を覚える様な、精神的弱者を鴨にしているとも思える団体も少なからず存在します。そのような事も含め、サポートを必要とされる方が心から安心と信頼を寄せられる団体として活動して行きたい、と言う私たちの思いは特定非営利活動法人の特徴そのものであり、NPO法人に成ることは必然だと考えます。
私たちの中心とする活動として主に、“個別心理カウンセリング”と“ピア(仲間)カウンセリングによるグループワークでの精神的サポート”この二つがあります。長年この種の問題に携わってきた経験から、現時点での現実的かつ有効な対応策であるとの確信に至りました。ここで言うグループワークは、アメリカで1960年頃から始まったDV(domestic violence:身体的、精神的暴力)の被害者支援や加害者更正プログラムが、様々な問題に応用され今日に至るものを指し、国内でも各都道府県や医療施設、福祉団体などがそれぞれの形態をもって行っています。グループワークでは、同じく心の悩みを抱えた者同士が集い、それぞれの心の内や現状を自由に話すことが出来ます。誰からも非難や否定,余計なアドバイスなどを受けることなくお互いの話に耳を傾け、ときに共感し、その時のありのままの自分を受けとめてもらえます。これにより参加者が得るものは、正当な自己評価や肯定感、自分と他者との共通点や違いから自己を客観的に見る視点の強化、それによる自己憐憫に酔うことや過剰な悲観的意識の改善などがあります。また、他の参加者の精神的,物理的成長が、プラスの刺激や競争心と成る場合や希望が生まれるきっかけと成ることもあります。更に、じっくりと話を聴いてもらうことで養われてゆく、変えられない現実を穏やかに受け止める精神力の向上等々、とても一人では得られない多くの貴重な体験をします。ピアカウンセリングの様なグループワークにより、参加者同士が日常的に心を解放しあえる場で人に受け入れられ、思いやりに触れ、尊重し合い、全ての人が異なり比較や評価するに値しない尊い存在であることを思い出し、それが自身にも適応される当然なことだという意識の確立は、人間としての成熟した柔軟な強さと優しさを持つ精神を養うことに繋がります。それは社会復帰や新たな道を選択するのに必要な行動を起こす大前提となる気力を取り戻すのにとても重要な役割を果たします。過去に私が参加したグループワークでは、過労による精神的な限界から自殺を図った男性が、日常生活にまで支障をきたしていた精神薬の副作用による痙攣や倦怠感など、本来の目的の薬効にも勝る苦しみを、グループワークで自身の認識の変化や心の癒しを重ねることで精神的な問題から解放されました。また服薬もワークの途中から必要なくなり、連動する様に悪化していた家族関係も徐々に改善され、最終的に職場復帰を果たしました。
グループワークは当事者の保護も含め閉鎖的空間となりやすいため、利用すべき人自身がこのような場に出入りすることを拒むケースも多い、否定的意識の対象となりがちという現状があります。しかし私たちはこの団体の活動を重ねることで、グループワークなどの精神的サポート活動が普段から気軽に参加できる精神的支えの場として広く認識される社会の実現に向け努力して行きます。そしていずれは地方などの、未だに精神的な問題を抱えた身内の隠蔽傾向が根強い地域にも浸透することを目指します。さすがにそれは遥かな夢のようにも思われますが、地道でも細く長くでも、個々の尊重を軸に活動を継続して行く考えです。また今後はより現実的なサポートとして物理的サポートや、自己体験から重要性を痛感している医療機関や他の団体などとの連携もしっかりと視野に入れ、当事者が生き生きと輝けるために出来る様々な手段を模索して行こうと考えています。
どの様な状況下でも自分らしさを見失うことのない、精神的な強さと優しさを身に付け、目に見えない困難を乗り越えてきた方々が社会で力強く活躍されるように成ることは、同じ境遇の方々の励みとなり、社会全体における理解やソーシャルワークの知識や価値、意識の向上などにも繋がります。全ての異なる人々が認められ受け入れられる社会環境が私達日本人の常識となることは、個々における豊かな人生のクオリティー向上の促進となり、如いては精神的かつ物理的に成熟した大人が築く、本当の意味での豊かな日本社会の確立であり、当団体は活動を通しその実現に寄与します。

2014年8月22日                       

                      特定非営利活動法人 Light Heart Counselling
                                 設立代表者 杉浦 寛子